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コラム

働き方改革②-同一労働同一賃金とは

ここがポイント‐この記事から学べること

1.正規・非正規の格差問題

働き方改革の3本柱

政府が進める働き方改革では、残業規制、同一労働同一賃金、脱時間給制度が3本柱として掲げられていますが、ここでは中小企業にとって労務管理に対する影響が大きいと考えられる同一労働同一賃金について、その内容と対策を解説します。同一労働同一賃金に関わる法改正は、中小企業においてもその内容をしっかりと理解したうえで、労務管理上の対応を行う必要のある重要な事柄といえるでしょう。

なぜ同一労働同一賃金なのか
なぜ同一労働同一賃金なのか

正規の雇用関係にある正社員以外のパート社員、アルバイト、契約社員、嘱託社員などと呼ばれる雇用形態の労働者を「非正規労働者」といいます。この非正規労働者については、「雇用の不安定さ」の点でも問題が指摘されますが、今回の法改正の趣旨は、非正規労働者の「不合理な待遇の格差」を解消することにあります。
非正規労働者は正社員の6割程度の給与とも言われ、年収100万円~200万円の低収入労働者も多く、正社員との待遇格差に対する不公平感は大きなものがありました。

そこで、政府は「非正規という言葉を一掃していく」との掛け声のもと、非正規労働者の待遇を改善するために、企業に対して不合理な待遇の格差の解消を義務付けることを制度化したのです。

2.同一労働同一賃金の概要

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、一言でいえば、職務の内容が同じであれば雇用形態にかかわらず平等に賃金を支払う、というものです。
なお、正確に言えば法律の内容は「同一労働同一賃金」そのものではないと考えますが(つまり、職務内容が同一であれば必ず同一の賃金であるべし、という考え方そのものを採用しているわけではない。)、分かりやすさを重視し、また一般的にも同一労働同一賃金の名で呼ばれていますので、ここでも改正法=同一労働同一賃金ということで話を進めたいと思います。より正確に言えば、従業員の均衡・均等待遇原則といったところでしょうか。

現行法の規定

現在でも、パートタイム労働法、労働契約法においてこの均衡・均等待遇に関する規定は置かれています。内容については次の改正法の箇所で合わせて説明します。

パートタイム労働法8条(短時間労働者の待遇の原則)
「事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」
パートタイム労働法9条
(通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止)
「事業主は、職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者・・・であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの・・・については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。」
労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」

このうち、労働契約法20条をめぐる非正規待遇格差の問題については、ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件という2つの最高裁判決が出ており、改正法における同一労働同一賃金への対策にも参考になるものと思われます。

改正法の規定

改正法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)によって、上記でみたようにパートタイム労働法と労働契約法でそれぞれ短時間労働者(パートタイマー)と有期労働契約者(契約社員など)に関するルールを定めていたものを、パートタイム労働法に一本化してルールが整備されます。これに伴い、パートタイム労働法は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(ここでは「パート・有期労働法」と呼びます。)に名称を変更し、短時間労働者と有期労働契約者の双方に適用されることになります。

肝心の中身については、基本的には現在のパートタイム労働法8条、9条及び労働契約法20条の内容を引き継いでいますが、順に内容を確認していきましょう。

均衡処遇(パート・有期労働法8条)

改正法であるパート・有期労働法8条では、現行法のパートタイム労働法8条(短時間労働者の待遇の原則)を有期雇用労働者についても適用し、使用者に対して短時間労働者または有期労働契約者への均衡処遇を求めています。

パート・有期労働法8条(不合理な待遇の禁止)
「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。」
つまり、業務の内容や責任の程度などを考慮して、短時間・有期雇用労働者と正社員との間で不合理な待遇格差を設けることが禁止されています。
そして、この待遇格差の不合理性は、基本給、賞与、諸手当、教育訓練、福利厚生など個々の待遇ごとに判断される点が重要です。待遇の相違が「不合理」であるか否かの判断要素は、①職務内容(業務の内容及び責任の程度)、②職務内容と配置変更の範囲、③その他の事情です。

職務内容
職務の内容が同一である場合はもちろんのこと、類似性がある場合もその程度とともに考慮されることになります。業務の種類、難易度、範囲や権限などが考慮の対象となります。
なお、職務内容はあくまで判断要素の一つですので、職務の内容が異なっていても待遇の内容によっては不合理と認定される場合もありえます。たとえば、通勤手当の支給などについては、職務内容が異なっていたとしても、短時間・有期雇用労働者を正社員よりも不利益に扱うことは、通常は不合理と判断されることになるでしょう。
職務内容と配置変更の範囲
これは、転勤や昇進、役割の変化の有無や範囲をいいます。いわば、人材活用、人材育成の仕組みの問題です。残業、休日出勤義務、遠隔地への転勤の有無、海外勤務の有無などの負担があるかないかでは、たとえば同じような業務をしていたとしても賃金に差が生じることは正当化されるといえるでしょう。
その他の事情
これには個別の事情に応じて様々なものが考えられますが、たとえば職務の成果、意欲、能力、勤続年数や過去の貢献度などが考慮の対象となりえます。長澤運輸事件最高裁判決(最判平成30年6月1日)では、「定年退職後に再雇用された者であること」が、労働契約法20条にいう「その他の事情」に当たると指摘しており、この点は改正法においても同様に考えられるのではないかと思われます。
違反するとどうなる

パート・有期労働法8条に違反すると判断された場合、不合理とされた待遇を定める部分は無効とされます。その結果、不法行為として損害賠償請求の対象となり、賃金であれば、過去の差額賃金相当額を逸失利益として賠償請求されうることになります。
この点は、現行の労働契約法20条がもつ民事的効力と同様のものと解されます。

均等処遇(パート・有期労働法9条)

改正法であるパート・有期労働法9条では、現行法のパートタイム労働法9条(通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止)を有期雇用労働者についても適用し、使用者に対して短時間労働者または有期労働契約者への差別的取扱い禁止しています。

パート・有期労働法9条
(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
「事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期労働者・・・であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの・・・については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。」

正社員と①職務内容(業務の内容及び責任の程度)、②職務内容と配置変更の範囲が同一である場合に、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、短時間・有期労働者を正社員と差別的に取扱うことが禁止されています。

福利厚生施設(パート・有期労働法12条)の利用

厚労省令で定める福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)については、短時間・有期雇用労働者に対しても利用の機会を与えることが義務付けられます。

待遇差の説明(パート・有期労働法14条)

パート・有期労働法8条(不合理な待遇の禁止)に関し、短時間・有期雇用労働者から求めがあった場合は、事業主は、正社員との「待遇の相違の内容及び理由」等を説明することが必要となります。

通常の労働者への転換(パート・有期労働法13条)

正社員を募集する場合の募集情報の告知(応募機会の付与)など、短時間・有期雇用労働者に対する正社員への転換を推進する措置が義務付けられます。

3.中小企業がとるべき対策

(1)正社員と非正規社員との間の待遇差を確認

まず、正社員と非正規社員との間に、基本給、賞与、諸手当、福利厚生、個別の労働条件等の個々の待遇ごとに、どのような相違が存在しているのかを確認し、整理します。

(2)正社員のみに支給されている待遇の支給要件・趣旨を確認

正社員には支給されていて非正規社員には支給されていない個々の待遇それぞれについて、支給要件や趣旨を確認します。そのうえで、上記で説明した3つの判断要素①職務内容(業務の内容及び責任の程度)、②職務内容と配置変更の範囲、③その他の事情を考慮したときに、その性質や目が非正規社員に対しても同様に及びうるものか否かを検討します。

(3)待遇相違の正当化事由の検討

待遇に相違が生じている場合、個々の待遇に対して①職務内容(業務の 内容及び責任の程度)、②職務内容と配置変更の範囲、③その他の事情を考慮したうえで、待遇差を正当化しうる合理的な理由の有無を検討します。

(4)就業規則(賃金規定)の整備・修正

賃金規定や雇用契約書に個々の手当の目的・趣旨を明確に規定し、先に検討した趣旨や目的に照らして各種手当を統廃合するなど、個々の待遇の内容や支給要件を明確にします。待遇差の理由について説明を求められた際、これに対応できるよう準備しておくことが必要です。
不合理待遇禁止をクリアするためには、従業員区分とその処遇の体系を、職務の内容、人材育成・人材活用の仕組みの違い及びその他の事情から説明がつくように修正し、処遇内容や条件を再編成することも検討結果に応じて必要となります。

なお、改正法による同一労働同一賃金は、大企業には令和2年(2020年)4月から、中小企業には令和3年(2021年)4月から適用されます。大企業では、例えばイオンリテール株式会社が社員区分に関わらず通勤手当の上限を撤廃することを発表するなど、対応が進んでいるところもありますが、未だ対応準備が進んでいない中小企業では早急に対応への着手が求められます。

2019.04.24 | コラム

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