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コラム

フレックスタイム制を1か月間だけ適用除外することはできるか?

ここがポイント‐この記事から学べること

1.特定期間の適用除外の可否

繁忙期だけ適用を除外したい?

一般的なフレックスタイム制では、1日の労働時間帯を、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と、その時間帯の中であればいつ出社または退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)とに分けて設計しています。フレキシブルタイムでは、当然ながら始業時刻・終業時刻は労働者の決定に委ねられていますので、使用者は従業員に対し、ある時刻までの出勤や居残りを命じることはできません。
しかしながら、たとえば年末年始の繁忙期だけ、あるいは、突然退職した従業員の欠員を埋めるためなどの理由で、ある特定の時季だけフレックスタイム制の適用を除外し、会社が従業員の始業時刻・終業時刻を管理したいと考えた場合、このようなことはできるでしょうか?

フレックスタイム制の眼目
「フレックスタイム制」は、1か月などの一定期間の総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決めることができる制度です(労働基準法32条の3)。毎日の出退勤時間(労働時間)を労働者が主体的に按配することで、育児や介護などを含め、仕事と生活の調和を図ることを眼目としています。会社の都合でフレックスタイム制を適用したり、適用しなかったりと変更することが、果たしてこのフレックスタイム制の趣旨を阻害しないかという観点で考える必要があります。

フレックスタイム制での過不足の清算

フレックスタイム制では、労働者は、清算期間(例えば1か月)において、あらかじめ定められている総労働時間(例えば170時間)の時間分を労働するように、自分で各就業日の始業時刻、終業時刻を決めて働くことになります。もっとも、業務量に応じて労働時間を配分した結果、労働時間が多くなる月もあれば、逆に労働時間が少なく済む月も当然出てきます。
こうした場合、本来であれば、労働時間に過不足が生じた場合、その清算期間内に清算するのが原則ですが、より柔軟に制度を運用できるよう、労働時間が不足した場合には、賃金カットをせず、次の清算期間に不足分を清算し調整することも認められています。
もっとも、労働時間に過剰があった場合(法定労働時間の枠を超える時間外労働があった場合)には、その時間数は割増賃金(労基法37条)が支払われなければいけませんので、次の清算期間に繰り越すことはできません。この点は注意が必要です。

フレックスタイム制は恒常的な利用を想定

このように、フレックスタイム制では、清算期間における総労働時間の不足時間に関し、一定の要件にもとづき次の総労働時間に繰り越すことができるなど、柔軟な制度設計を可能にしています。
そして、フレックスタイム制は、労働者の生活と仕事の調和を図りながら、効率的に働くことを主眼とした制度ですので、この制度の効用を受けるためには、実体としてその趣旨に合致した制度となっていることが必要といえます。
したがって、法が定めるフレックスタイム制といえるためには、それが恒常的かつ全体的にフレックスタイム制が採用されている必要があるといえますので、1年のうち特定の期間だけその適用を除外することは法の趣旨に反し、認められないものと考えます。

2.代替的対応策

コアタイムとフレキシブルタイム

コアタイムとは、労働者が必ず労働しなければならない時間であり、フレキシブルタイムとは、労働者の選択により労働することができる時間です。
したがって、労使協定によってコアタイムを設けていない場合には、始業時刻と終業時刻は完全に労働者の選択に委ねられていますので、使用者は業務命令として特定の時刻への出社、退社を命じることはできません。

従業員の同意を得ればOK!

もっとも、これは業務命令として出勤や居残り、残業を命じることができないというだけに過ぎません。労働者の同意を得れば、ある特定の時刻への出勤や退勤を求めることができます。
もちろん、これは完全に労働者の任意に委ねられていますので、強制と取られるようなことがあってはなりません。使用者側からの「お願い」に対して、労働者側が「同意」したことを、しっかりと手続的に整えておくことが必要です。
また、フレックスタイム制のもとでは、そうした扱いはあくまで例外的な働き方です。その運用があまりにも長期間となると、やはりフレックスタイム制そのものの適用が否定されてします可能性がありますので、注意が必要です。

弁護士 古山雅則

この記事を書いた執筆者:弁護士 古山雅則

岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。

2019.07.30 | コラム

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