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コラム

いよいよ新残業規制が中小企業にも適用開始!

ここがポイント‐この記事から学べること

1.人材流出が止まらない!国家公務員の激務を反面教師に

健康を犠牲にした「やりがい」ではモチベーションは続かない
「官僚」と言えば聞こえは良いですが、国を動かす仕事のやりがい、恵まれた福利厚生や社会的地位といった魅力あふれるはずの国家公務員も、働く意欲に減退傾向がみられ、転職希望者が急増しているようです。2020年3月15日付日経新聞朝刊総合面では、大手転職サイトへの公務員の登録数は最高水準にあり、国家公務員の離職者は3年連続で増加しているとの記事が取り上げられています。
厚生労働省の若手職員で構成する働き方改革チームによれば、職員へのアンケートにおいて「生きながら人生の墓場に入った」「一生この仕事で頑張ろうと思うことはできない」との悲壮感ただよう回答もあり、20~30代の職員の約半数が業務にやりがいを感じている反面、6割が「心身の健康に悪影響」、4割が「やめたいと思うことがある」と回答していることが明らかになっています(同日経新聞朝刊記事)。
有能な人材の流出は、将来の行政機能の低下を招き、国力そのものを損なう結果となりかねないものであって非常に憂慮されます。

国家公務員にも長時間労働の是正を!企業はこれを反面教師に!

霞が関で働く国家公務員の残業時間は月平均100時間にも及び、民間企業の平均を約7倍上回る残業を強いられているうえ、精神疾患による休業者の比率も約3倍高いという調査結果が出されています(同日経新聞朝刊記事)。
各省庁や職位によってももちろん違うとは思いますが、長時間労働に従事する国家公務員が多いことは容易に想像できます。イメージどおりと言えばイメージどおりかもしれませんが、中央官庁も自身らの特別意識を排除し、自らの長時間労働を是正していかなければ国の施策に説得力を持ちえません。
労働基準法改正による新残業規制は、長時間労働=健康障害の構図が明確化された昨今、悪の象徴ともいえる「長時間労働の是正」のために導入されたものです。加えて、労働時間を減らす分「労働生産性の向上」を目指して努力せよ、という労働生産性向上促進の発破も含まれています。
国家公務員も公務員の前に人であり、長時間労働によって健康障害に陥る危険性が高いことは民間企業の労働者と同様です。一般職の国家公務員に労働基準法は適用されませんが(国公法附則16条)、働き方改革の趣旨が等しく国家公務員にも及ぶことはその性質上当然なはずであって、長時間労働が是正されることを願わずにはいられません。
心身の健康を害するほどの長時間労働が常態化していては、志望者の減少、人材の流出という組織の弱体化につながることを中央官庁自身が実証しています。各企業においては、中央官庁のこうした実態を反面教師としながら、改正労働基準法による新残業規制に前向きに取り組んでいただければと思います。

2.新残業規制の概要

働き方改革と残業規制

2018年に成立した「働き方改革関連法」において、特に注目された改革の一つが時間外労働の上限規制を強化する労働時間改革です。長時間労働の是正のために時間外労働の「絶対的上限」が罰則付きで導入されることになりました。改正労働基準法は2019年4月1日から施行されていますが、中小企業への適用は1年間猶予されていました。2020年4月からは、中小企業も新残業規制の下での労務管理が求められます。
なお、新残業規制については、【働き方改革1-新しい残業規制】でも働き方改革の背景事情を踏まえて解説をしていますので、こちらの記事もあわせてご参考ください。

新残業規制-法改正の要点

新残業規制は、労働基準法を改正することによって行われています。これまで時間外労働に対する規制は、「労働基準法36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平10.12.28 労告154)という時間外限度基準告示によって指針を定めることにより行われていました。改正労働基準法では、この限度基準告示の内容をベースとしながら、これに修正を加えた基準を法制化し、長時間労働の抑止を強化しています。

【新残業規制の要点】

□ 原則(労基法36条3項、4項)
 ・1か月  45時間
 ・1年  360時間

□ 例外‐特別の事情がある場合(労基法36条5項、6項)
 ・1か月 100時間未満
 ・1年  720時間
 ・2か月ないし6か月間の1か月平均 80時間以内
 ・月45時間を上回る回数は年6回まで

原則的上限

改正労働基準法は、「労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る」(労基法36条3項)と規定したうえで、その限度時間について、「限度時間は、1箇月について45時間及び1年について360時間」(労基法36条4項)と定めています。
したがって、この時間外労働の原則的な上限については、従前どおり1か月45時間、1年で360時間となります。

例外の絶対的上限

新残業規制の最大のポイントは、これまで事実上青天井に認められていた特別事情がある場合の例外的な労働時間の延長限度に対し、しっかりと蓋を閉めたことにあります。罰則に裏付けられた強制力ある縛りを設けることによって、時間外労働に対する絶対的な上限規制がなされることになりました。

【限度時間の例外に対する規制4項目】

(1)1か月における時間外労働及び休日労働は100時間未満(労基法36条6項2号)
(2)1年について時間外労働できる時間は720時間(労基法36条5項)
(3)2か月ないし6か月のそれぞれの期間における時間外労働及び休日労働の1か月あたりの平均時間は80時間以内(労基法36条6項3号)
(4)月45時間を超えて時間外労働をさせることができる月数は、1年について6か月以内(労基法36条5項)

時間外労働と休日労働

時間外労働も休日労働も一般的には「残業」と呼ばれていますが、法律上は区別して考えられています。時間外労働とは、1週40時間、1日8時間を超えて労働させる場合をいい、休日労働は週1日の法定休日に労働させる場合をいいます。例外に対する規制4項目においても、規制の対象が「時間外労働」だけなのか、「休日労働」も含まれるのかは注意して理解する必要があります。
上記4項目のうち、休日労働が含まれるものは(1)の100時間規制と、(3)の80時間規制です。つまり、限度時間の最大である1か月100時間未満という規制は、時間外労働(労働時間の延長)と休日労働を合せて計算されることになります。

規制違反に対する罰則

上限規制(労基法36条6項)に違反した場合には、「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」(労基法119条)が課せられ得ます。この罰則規定は、事業主はもちろんのこと、労働時間を管理する責任者に対しても適用されます。労務管理者は、これまで以上に、時間外労働、休日労働について厳密な労働時間管理を行うことが求められます。

3.残業の実態を把握しよう

自社の従業員の労働時間の実態を把握し、もし新残業規制をクリアしていない働き方となっている場合は、これに適応できるよう業務内容や雇用制度、賃金制度を変えていくことが必要となります。

実態を把握する場合は、例えば新残業規制の視点から次のように行います。

(1)どれだけ忙しい月であっても1か月100時間を超えて残業させることはできません。
⇒ 休日労働を含めた残業が100時間を超えている月がある場合は要注意
(2)ある月において99時間の時間外労働を行わせた場合、翌月は必ず61時間以内の残業に抑えなければなりません。
⇒ 繁忙期が2か月以上続く場合は要注意
(3)特別事情に基づく残業上限月45時間規制の適用除外は、あくまで臨時的「特別」な事情に基づく例外的措置です。
⇒ 月45時間を超えて時間外労働をさせる月が6回以上ある場合は要注意

弁護士 古山雅則

この記事を書いた執筆者:弁護士 古山雅則

岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。

2020.03.23 | コラム

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